伐ることで育てる

群馬県みなかみ町北部に広がる「赤谷の森」でイヌワシの
生育環境保全の為に伐り出す木はこれまで“価値のない木材”とされてきました。
私たちはその個性豊かな木たちを“イヌワシ木材”と呼び 価値向上に取り組んでいます。

みなかみ町は、2017 年にユネスコエコパークに登録され、イヌワシはそのシンボルです。
国有林での「赤谷プロジェクト」や、「みなかみネイチャーポジティブプロジェクト
(みなかみ町・三菱地所株式会社・日本自然保護協会の連携協定事業)」など、
様々な連携や支援を活用して、イヌワシを守る取組を進めています。

  • イヌワシ木材
  • イヌワシ木材
STORY

STORY

みなかみ町とイヌワシ

イヌワシは山や森に生きる猛禽類で国内では絶滅危惧種に指定されています。
彼らの生育環境を保つことは多様な生態系を守ることにつながります。

  • 赤谷プロジェクト

    赤谷プロジェクト

    群馬県みなかみ町北部に広がる「赤谷の森」と呼ばれる約1万ヘクタール(10㎞四方)の国有林で、林野庁関東森林管理局、赤谷プロジェクト地域協議会、 日本自然保護協会の三者協働で「生物多様性の復元」と「持続的な地域づくり」の実現に取り組むプロジェクト。
    2003年11月に発足し、活動は20年を超えました。 主な活動は、人工林から自然林への復元、イヌワシの保全、ニホンジカの低密度管理、防災と渓流環境復元の両立。
    また、環境教育や地域づくりにも取り組んでいます。

    赤谷プロジェクトとは

  • イヌワシの生態

    イヌワシの生態

    体長は約1m。ひろげた翼は2mちかく、全身は黒褐色で、後頭部は金色。広い生息域を必要とし、森林生態系食物連鎖の頂点に立つ“アンブレラ種”とされています。
    イヌワシが生息できる環境は、その他多くの生物が存在する多様な自然であると言えます。しかし、人間の山林開発~生活様式の変化に伴い、彼らに適した営巣環境や、狩りをする環境を失ったことで、90年代以降、子育ての成功(繁殖)率が低下しています。国内では500羽程度しか生息が確認されておらず、国の希少野生動植物種であると共に天然記念物にも指定されています。 赤谷の森では1つがいが生息しており、赤谷プロジェクトでも保全活動に取り組んでいます。

  • なぜ木を伐るのか

    なぜ木を伐るのか

    イヌワシが生きる為には当然ながら獲物を獲って食べなければなりません。食べることが、子育てが成功することにつながります。 彼らはその大きな翼を広げて飛び、主に地面にいる、ノウサギやヤマドリ等を獲物としますが、人工林を含む生い茂った木々で、狩りに充分なスペースがないことが、子育ての失敗が続く要因の一つではないかと考えられています。 赤谷プロジェクトでは、人工林を自然林に復元する過程で、イヌワシの狩場をつくり、彼らの狩りと子育てを支援しています。その為に切り出した木々が「イヌワシ木材」です。

  • 「良い木材」とは?

    「良い木材」とは?

    「良い木材」の定義とはなんでしょう。 手入れをされて育ち、人間都合の“使いやすい”規格に加工されたものが“良い”でしょうか?それ以外の木材はどうでしょう?
    生物や植物の生きることの美しさや良さというものは、そういった概念にとらわれないところにあると私たちは考えています。彼らの育ったままを活かし、彼らの今後の変化の可能性も楽しみと共に受け入れる。そういった木材とのあたらしい関係性を提案したいと思います。

  • 木材の計画伐採について

    木材の計画伐採について

    赤谷プロジェクトの活動によって、イヌワシの為に伐採する木は、国有林の中にある木達です。
    「いつ」「どのエリアのどの木を伐るか」ということが国によって管理をされています。イヌワシ木材は「需要に応える際限のない供給」ではなく、「定数の供給に見合った需要」を生み出し、それを継続して行こうという取り組みです。

STORY
PURPOSE

PURPOSE

私たちが目指すこと

イヌワシの保全 自然林再生 木材の活用と地域循環

木材の新たな価値創造と雇用創出
  • これまでも、イヌワシのために木を伐採してきました。

    伐採 広い狩場 繁殖 自然林再生 生態系の保全

    アンブレラ種であるイヌワシの生育環境保全を進めるということは、現状の自然環境にまつわる様々な課題を、改善していく糸口を掴む試みであり、傘の下につながる様々な生態系と森と人の、調和していく未来を目指す取り組みといえます。

  • しかし、その木を十分に活かせていませんでした。

    伐採 運搬 加工 販売 消費者

    イヌワシ達の狩場をつくることに適した場所は、人の立ち入りにくい山の奥。伐採に入ることも、木の搬出も困難です。そしてそこに育つ木々は、手入れをされてきておらず反りや曲がりが多くなっており「手間がかかるのに建材にも適さない」即ち価値が低い木材とみなされ、薪やウッドチップとしてその他の木材と同様に扱われています。また、時代の大きな流れとして、安価な外国産材の流通が活発になり、国産材の需要が低下したことで、伐採、製材、乾燥といった山間地域ならではの産業も衰退傾向にあリます。地域の木に価値がつかず使われない事で、その木を伐る地域の産業が弱まり、その木の育つ地域の自然と人との調和が崩れてきているのです。一度は人が手を入れた森が、自然としての健全な状態に向かうには、果てしない時間をかけた、自然の自浄力に依存せざるを得ないのが現状です。

  • これからは、その木をイヌワシ木材と名付け、価値を高めていきます。

    伐採 運搬 製材乾燥 仕入れ 加工 販売 消費者

    これまでの流れを大きく変えるのに難しい仕組みは必要ありません。
    みなかみ町の人達が愛する自然を保ち続けるきっかけの一つと言える「イヌワシの為に伐り出された木材」というストーリーをそのまま明確に打ち出し、それを知る人が増える事で、木そのものを使うことの選択が変わり、イヌワシ木材に限らない、国産木材の消費や活用を刺激する取り組みになりたいと考えています。

  • 将来的には、需要の興盛が雇用へ繋がると考えています。

    伐採 運搬 製材乾燥 仕入れ 加工 販売 消費者

    消費者起点で需要が高まれば、売上とともに、森に関わる仕事が魅力的になり、各事業力が高まります。それによって森にまつわる事業者が増え、その雇用が増えれば、現在の状況が改善していくと考えています。ただ、それによって需要に応えた供給が膨らみ続け、かつての過剰な人工林を繰り返すのは理想ではありません。
    イヌワシ木材を伐りだす森は、ユネスコエコパークに登録されており、国有林として計画的に管理が行われています。供給量が限られていることには大切な意味があります。
    森林を、自然を、より良くするための伐採で、自然と人の調和を目指したいと考えています。

PROJECT

PROJECT

活用事例

製品材料や建築材料として実際に使用されている例をご紹介します。